http://c9zchq.sa.yona.la/243 |
返信 |
「コイツ目見えないから。」
ストーブの前に陣取るおじさんの飼い猫は盲目だった。
若い猫だが、病気で目が殆ど見えなくなってしまったらしい。
目を開けてモリモリと餌を食らう姿は、他の猫と何ら変わらなかった。
猫は餌を食べ終えると、座椅子に腰掛けるおじさんに密着して、にゃあと鳴いた。
おじさんは猫を優しく撫でながら、猫の話を色々と僕に聞かせた。「こいつ幸せなのかなあ…」
おじさんがつぶやいた。僕は黙った。猫も何も言わない。時計の秒針の音が聞こえる。
猫はしっぽでおじさんの太ももを叩いている。―ぽん、ぽん。
母親が赤ん坊をあやすようにゆっくりとした一定のリズムで。
目に見えない幸せをしっぽで確認するように。―ぽん、ぽん。
投稿者 c9zchq | 返信 (1) | トラックバック (0)